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またもや「そこから」スタートなのです

5/15「お椀のお直し」に読者の方からいくつかコメントをいただいて、

また色んなことを感じました。

ちょっと長くなりますが、まとめておきます。

 

***引用***

 

コメント1)

 

こんにちは。無知を晒しますが、お椀って直せるのですね。

とても感動しました。

愛着のあるものは、やはり長く使いたいものですが、大切に使っていても傷がついたり壊れてしまうことがありますね。
こんなに綺麗になったお椀を見てご依頼主様もさぞおよろこびになったことと思います。
漆塗りとても興味があります。

 

返信1)

 

コメントありがとうございます。
木製の素地に本漆を塗ったオーガニックな漆器であれば、お直しが可能です。
つまり日本の伝統的な素材と技術によって作られた漆器ということです。

「伝統的」という言葉を、私がいつもあえて用いるのは、木ではない素地に、漆でない塗装をした製品も「漆器」と呼ばれている場合がたいへん多いからで、そういった製品はお直しができません。

伝統的な漆器は、製造に手間も時間もかかりますし、決して安価なものではありませんが、大切に扱い、メンテナンスをすれば、一生使い続けることが可能です。
物を捨てない、再生させる、持続する、ライフスタイルを、教えてくれます。
そして、何年、何十年と、暮らしに寄り添ってくれることを思えば、決して高い買い物ではないと、思うのです。

 

 

コメント2)

お椀ってきれいに再生できるのですね~

 

返信2)

木地つくりも手しごとなので、大切に「使いきる」という意識が強いんだと思います。

 

コメント3)

今、100円でなんでも安く手に入ったり、家電などでも直すことに費用が掛かり、使い捨てが当たり前な時代になってしまってますが…断捨離もブームだし。
でも、自然を壊して手に入れた素材を大事に使わなければいけないということを心に留めておかなくてなならないですね。
手仕事により再生されるのなら、使うものを厳選し使い続けることも必要だなと考えさせられました。

 

***引用ここまで***

 

まず私が一番興味深かったのは、漆器は修理可能であるという、漆に携わる者にとってはごく当たり前の知識が、ユーザーにとって一般的なものではない、という事実でした。

 

「直せるのは知ってるけど、実際にどうやって修理するの?」という問いに答えるようなつもりで、記事を書いたからです。

 

ですが読者はまず「直せる」という事実に驚いて、そのあと、とても素直な感動の気持ちを伝えてくださっています。

 

漆のお仕事をして色んな方とお会いする中で、自分にとっての当たり前が一般常識ではないことは常に意識しますし、みんなはどんなことが知りたいんだろう、何に興味があるんだろう、と日頃から考えています。

 

去年一年、ビーズ作家さんとコラボ作品を作るにあたり、何度もお打合わせをする中で、当然、漆についてもお話をさせていただき、「そういうお話を、恵さんはもっとブログで発信しなきゃ」と言っていただくことが度々ありました。

その中には、正直「え、そこから始めなきゃいけませんか?」と思うくらい、自分にとって自然で当たり前のこともありました。

 

ユーザーが作り手と同等の知識を持つ必要は、もちろんありませんし、日常で使用している道具や機械だって、どんなふうに作られているか、知らないものがほとんどでしょう。

 

ですが、例えばもし、あなたのお家に、一部が破損して使えない、でもすごく素敵な古い漆器があったとして、「直せる」ということを知らないがために、ずっとしまいこまれていたり、あるいは捨てられてしまうようなことがあるとしたら、それは本当にもったいない、悲しいことだと思うのです。

 

ワークショップの時間を利用して、お直し相談なんかも始めようかなと思っています。

 

作った人、または産地が分かれば、そちらに問い合わせていただくのがベストですが、そうでなくても直せる場合がたくさんありますよ。

 

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それと私は、漆器を模して大量に生産される器と、手仕事でつくるオーガニックな漆器を区別するために、よく「伝統的」という言葉を使いますが、決して伝統至上主義というわけではありません。

 

安く手軽に消費できるものも、素材を選び手間を惜しまず作られた高額なものも、どちらも求める人にとっては価値があります。

目的に合わせて使い分けることで、暮らしをよりハッピーにできると思います。

 

100均の器と伝統的な漆器は何がどう違うのか、なぜ値段がこんなに違うのか、

知っていただき、使い分けていただけるよう、分かりやすい製品情報を伝えることが大事です。

 

そのために、作り手として何度でも、「そこから」を発信していこうと思います。